あまのがわ/前田ふむふむ
やや、うしろを歩く。」
草は波のように、寄せては還して、
塩からい汗を吐きだす夏を、加算しながら、
「姉妹は、白いレースで飾ったスカートを着て、
やや、前を歩く。」
腕と足に絡み付いてくる草に、躰を裂かれて、
わたしは、風に靡く葦のように、
口から気泡を吐いて、草の海に、たおやかに、
溺れている。
洗濯物を干す竿が、飛行機雲と平行に引かれている。
かわいた手触りで、ひかりを集めてある、
なだらかな丘陵が、白い芽吹きに包まれて、
かつて、あの虹の掛かっていた、
一面、恋人の胸のようなところに――、
あたたかい風が、仕舞っ
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