「 教室。 」/PULL.
 
る?。」
「染み…ですか?。」
「うん染み。
 あの染みね、
 ぼくが付けた染みなんだ。」
「そう…なんですか。」
「そう。
 ぼくが付けた。」

遠く、
壁の染みを見て、
男は言う。

「きみは過去の傷とか想い出とか、
 大切に取っておく方?。」
「放っておきます。」
「どうして?。」
「そしたら、
 いつか消えて、
 癒えて…なくなるから。」
「それがどんなに悲しくても?。」
「はい。
 どんなに悲しくても。」
「そうか…そうだね。
 いつか癒えるんだね。
 みんな、」

男は遠く、
もっと遠く、
壁の染みの向こうを、
じっと見ていた
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