砂のこえがきこえるように……/輪橋 秀綺
どと云いにくるだろう
そうしたらぼくは 何を探しているのかを知りたいんだ と答えるしかない
どこぞのドラマで 海に投げられた指輪を探すような
そんな単純なものであって欲しくはなかったから
同じように
どこぞの小説で 手紙の入った瓶をそっと流すような
そんなロマンの追求には辟易していたから
だからぼくは
暇になると海で泳ぐけれども
浜に上がるとそのまま寝てしまう
ぼくはいつも思う 馬鹿は風邪を引くんだって
夏という季節にも 雲は流れていてくれるんだな
ぼくは青に囲まれて そこらの音を聞いていた
不規則なはずの音たちはいつしか旋律になって
ぼくの体を満たす
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