高架上食堂の朝/hon
 
ふつうはおかしいと思うだろう
それが逆にうまいもんをくわせる穴場とか思っちゃったのかな
おれはおおいにあわてふためいた
しらない客なんか相手にするのはひさしぶりだったからだ
男たちからは世間の匂いがした
彼らは今しがたまで世間ですごしていて
いっときここに立ち寄って、また世間へ帰っていく男たちだ
ふつうはそんな匂いなんて感じないもんだけど
ながいこと世間からはずれているとそいつがわかるのさ
おれはというともうずっとここが全てなのだ
ここよりほかにはどこにもないのだ
ここだけが全てである店主と、ここが通過点にすぎない客
おれは戦慄したね
勝ち目なんかはなからなかったさ

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