「ものとおん」#10−#12/リーフレイン
たことがなく、髭も剃られたことがない
焦点を決して結ぶことがない眼球があさっての方向を向いて静止する
彼を見る者は、彼の視線の先に立つことはないので、安堵し、安堵することに嫌悪する
沈黙のままに、彼に触れる
つかのま
壁に背をもたれ、世界を眺める
華やかな歌は少ない
さまざまな風が吹き、血が流れる
死は詩よりも身近で、醜いものは美しいものよりも現われやすい
雑草が繁茂し 様々なものが乱雑に建てられては壊れていく
弱いものは殴られ、裏切りが行われる
荒々しい風が吹き、荒々しい雨が降る
晴れやかな笑い声が響く
オメラスを出た旅人は
すぎし日に
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