「ものとおん」#10−#12/リーフレイン
 
日にオメラスの中心にあった建物を訪れたように、庭を訪れる
オメラスには帰らない
だが、彼らはオメラスの子らでもあったので
オメラスを破壊することを夢想し、怯え、夢想でしかないことを恥じる
今は、涙を流すことができる 

いつか
数え切れない日の後で、ガラスの壁が溶解する日がくるだろう
全てのレリーフが溶けて流れて、花々で覆われた地面と混ざり合い
そして、砕け 
何もない砂原になる
永遠に続くものは何一つないのだから

その砂原に音楽が流れる
美しいものと醜いものが同値になった音楽が
風にのって微かに
流れる





注)オメラス
「オメラスを出る人々」A・K・ル=グィン
  (早川SF「風の十二方位」に収録の短編)
オメラスと言う名のユートピアの街。その快楽はごく少数の犠牲の存在の上に成立していた。 住人は何を犠牲にして何を自分たちが享受しているかを熟知し、なおかつその享受を手放すことがなかった。






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