「ものとおん」#7−#9/リーフレイン
している
二枚におろされた魚の切り身のようでほんの少し血が滲む
表情の読めない半分の顔のまま、
花火を見に行きたいとしきりにせがむようになった
一本足がひょうひょうと跳び歩き
ひゅーきゅーと空気の抜けた音で笑う
今年の膳にも供された半身が干物になって乗っているのが見える
全ての料理は別々の小さな皿に盛り付けられる
皿の一つでは、兄がお経の五色紙を頭に巻いて踊っている
紙は長く伸びていて、母のふところに繋がったままだった
母はあきめくらなので兄の踊りを見ることはない
手探りで漬物を切っている
漬物は三十年前、祖父が漬け込んだ黒瓜と茄子だ
皿をはしでか
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