「ものとおん」#6/リーフレイン
結婚披露宴のようで、文金高島田の白い花嫁がうつむいている。客が一斉にこちらを向く。
――妻をしりませんか――
末席にいた客が「あんたの花嫁じゃないな。」と答え、皆がにそにそと笑った。襖を閉める。 次の部屋にはお祭りの最中の男女が華やかな正絹の蒲団を被って忙しくしている。あの顔をゆがめて男の下に組み敷かれている女は妻か?
いや、もっと若い。
猫が座布団に座った部屋、庭に満開の牡丹、忙しげに数人が立ち働く厨房、
――ああ、あそこに違いない――
裸足のまま、裏の井戸へと急ぐ。半円を二つあわせてある重い石の蓋を横にすべり落として、中を覗き込む。 2メートルほど下には、もう黒々とした水
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