「ものとおん」#6/リーフレイン
 
にお参りさせてくれないか。急だったなあ。」 いぶかしく思っているうちに夏目は靴を脱ぎ、奥座敷へ向かう。うちの仏壇には息子の位牌しかない。20年以上も前でいくら友人といえ夏目がわざわざお参りするとは、と考えているうちに記憶が2重にかぶさってきた。 仏壇に大人の真新しい位牌が白々と見える。吐き気がしてきた。 妻を捜す。今の時間なら庫裏屋だろうか、いや、裁縫の部屋に違いない。庭の草取りをしているかもしれない。2階の掃除だろうか,蒲団干しだろうか。 部屋から部屋へと探し歩く、こんなに部屋があっただろうか? 次から次へと襖を開けては閉め、開けては閉め、半ば走るように廊下を急ぐ。大部屋で宴会をやっていた。結婚
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