「ものとおん」#6/リーフレイン
 
つれたままの髪の毛を枕に寝てしまった。翌朝、髪の毛はいつもと変わりなかった。どうやら寝室は蚕部屋であったらしい。部屋が虫を引き寄せたのかもしれない。白い障子紙に桑の木を墨で書き、緑の葉をたわわに書きそえた。緑色だけ濃淡をつけて墨の上へ置いていく。金粉をすこし散らす。先の部屋の障子をそれに張り替えた。その晩、蚕がむしゃむしゃと葉を食らう夢を見た。毛虫はいない。

「御免下さい」という声がかかった。 ガラガラっと戸が開けられ、同僚だった夏目が立っていた。懐かしい。手招きをして炉辺の座布団をぽんと叩き、側に来るよう促す。 「ああ、元気そうでよかった・・・・・・」 つかつかと歩みよってくる。 「先にお
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