「ものとおん」#6/リーフレイン
た妻だった。笊にあけた豆の筋をとっている。なにか思い出しているのか、少しぼんやりした顔だ。きびすを返して書庫へと急ぐ。小さい写真立てに写真をいれる。居間の文机の上に置いた。日当たりのよい場所に居間全体が見えるように置いた。妻が庭から水仙を切ってきて一輪挿しにさした。手を握る。
夜中、ふと起きて明かりをつける。髪の毛の中に、7ミリほどの小さい毛虫が何匹も這っていた。尺取虫に似た体躯で鮮やかな緑色をしており、細かい黒い毛がびっしりと生えている。体を真ん中で大きく曲げて、ゆらゆらとゆれていた。当然感じてしかるべき嫌悪感もないままに櫛ではがす。長い髪の毛の中にもつれてしまう。まあいいか、と虫がもつれ
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