「ものとおん」#6/リーフレイン
の代わりに茶色の木綿が縫いこんである。
”千本格子の障子の向こう、
うなぎの寝床の古家の中で お宮参りの吾子が寝る
羽二重羽織は虎の背模様 いまだ薄い髪の毛の
小さい頭がかしいで見ゆる
ようやく眠った晴れ舞台 ねんねん そっと 口ずさむ”
呟くようにこんな歌を繰り返し唄っている。暫く眺めていると、顔をあげてこちらを見た。泣き笑いのような表情で、何かを言う。わからないまま、立ちすくんでいると、ふっと女の顔が変わった。眼窩が落ち窪み真っ黒な穴となり、鼻も二つの穴に変わる。全体が青黒い。悪意のような冷たい意志がはいよる。頭を振って落ち着いて見直すと、そこに座っているのは見慣れた妻
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