東京無音日記/はらだまさる
 
ったし
大きな声で笑いたかったけれど
二十年という時間を巧く飛び越える役者の演技も
小さなハコならではの表情や呼吸まではっきり感じ取れる
舞台らしくないリアルな感じも
演劇に対する真摯な姿勢も、その眼差しも、涙も
不老不死の魔法をかけられた
二十年前のままで


そう、あれから二十年、十一歳で福岡を離れて
関西弁の中で十二歳のぼくは、うじうじしてよく泣いていた
その二十年後の東京でぼくは頭痛で
きみに電話するのも忘れるくらい
いつもきみのいないところで


   *

時間の魔法がかかったまんま
下北沢の薬局で、ようやく頭痛薬を買って飲んだ
何とか云う名前
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