猫茶碗/■
昼のかき入れ時も過ぎると決まって
息をつく間もなく借金取たちの催促が始まった
が、二三押し問答の末、借金取たちは
店主に向かって何やら捨て台詞を言い残し
ぴしゃりと店を出て行く
というのが日常の景色であった
店主もまたカウンターに座して
肩で呼吸をしながら
この世を拗ねたような言葉を
ぶつぶつと呟いた
それとは無関係に、真面目屋は益々繁盛した
かねてより真面目屋が儲からないのには
歴とした訳があった
それは、元より一杯百八十円のかけ饂飩を
何百杯と商ったところで、売り上げから
饂飩粉、塩、昆布、鰹節、いりこ、薬味、醤油
などの元代を差し引いてしまえばまず儲けなど
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)