遺書/Utakata
と見つめていたのかもしれない。僕はその間、君の身体に空いた深い穴の中に両腕を差し入れたまま、ずっと動かずにいた。両手に触れるものを何ひとつ見つけられないまま、ずっと動けずにいた。君はあのときに何を見ていたのか、なんて、もしかしたら君の方だって、もうとっくに忘れてしまっているかもしれないけれど。ねえ、まだ君の中に空いた穴は残っているのかな。君の胸の奥に、どうしようもなく空いているそれは、まだ君の痕跡として残っているんだろうか。
ねえ、まだ雨が止まないんだ。まだ日の出までは遠くて、窓の外は相変わらず真夜中みたいに暗いままなんだ。君は今どこにいるんだろう。君のいる場所では、もう夜明けは近いんだろうか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)