遺書/Utakata
 
を言ったら、君は笑うだろうね。僕に似合わずに妙にセンチメンタルだと、僕を笑うんだろう。

 雨が止まないよ。時計は手元にあるけれど、なんだか一時間前からずっと同じところを指しているような気がするよ。止まっているかと思うけれど、ちゃんと秒針は動いているんだ。秒針の動きを眼で追っていくとちゃんと六十秒で一周して、分針がひと目盛り動いているのがちゃんと解るんだ。けれど何分間か待って改めて時計の文字盤を見てみると、やっぱりさっきと同じ場所を指しているんだ。君のいる場所の時計は今どの時間を指しているんだろう。

 君の胸に空いた穴の中に手を差し入れたとき、ひどく薄いはずの君の身体の中にこんなにも深い
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