キルティング担当大臣/カンチェルスキス
 
決めてるほうの中年男性が、レバノンのハンカチで口のまわりを拭いながら訊く。背ビレはレナウンと決めてるほうの中年男性が、訊き返した。
「なんです?」
「今朝の電車があまりにも刺激的だったからですかね」
「ああ、そうかもしれないですね」
「車掌を囲む会に出席することになりました」
「私のところは、車掌が無精者でドーナッツを補充しないものですから、まるで弱肉強食のようになってしまって、たいへんでした」
「ご苦労様です」
「あんがと」
 仮に、あの吊り革がトローチだとしたら、どうなるんだろう。漁師も兼業してる車掌が今日はたまたま巨大トローチが網に引っかかったと、吊り革の代わりに巨大トローチ
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