キルティング担当大臣/カンチェルスキス
 
絵を描きに行く者、マンホールガ動いたと主張する者、これから手品をしに行く者、みんなさまざな背景や環境を持ってる。朝の通勤・通学ドーナッツ電車を切り抜けた者は、各自の現場でお互いの顔を見合わせて、すごく自然な微笑を漏らしてしまう。
「あ、あなたも今朝はドーナッツ電車だったでしたか?」
「そうなんです、私も」
「砂糖ついてますよ、口のまわりに」
「シュガー。あなたも」
 社会人の息子と大学生の娘がいるような中年男性同士が、口のまわりを砂糖まみれにしてる。蟻のベースキャンプになりそうなほどだ。
「今の今まで口のまわりの砂糖に気づかなかったのは、あれですかね?」
 コーヒーにはクリープと決め
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