キルティング担当大臣/カンチェルスキス
こうが透けて見えるドーナッツ、だとしたら、みんなつかまろうとするだろうか。物事に誠実に対処しすぎるあまり鬱病になってしまいがちな人なんかは、どんなに甘かろうが砂糖で手がねとねとしようが、崖に残した右腕みたいな感じでつかむだろう。「この手を外してしまったら私は死んでしまう!」という切迫感とともに、どんなに線路切替で揺れようがドーナッツ吊り革にしがみつく。まるで離婚話を切り出されて急にもう無茶から足を洗う、などと宣言してしまった夫のように。いろいろやってきたけど、やっぱりおまえがいちばんだ。まあ、そんなことはいい。
食ってしまうやつもいるだろう。朝寝坊して、朝めしもコーヒーも飲まず、朝起きてしたこ
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