キルティング担当大臣/カンチェルスキス
たことと言ったらズボンのチャックを閉めただけの彼が、出発間際の快速に飛び乗って、間に合った安心感から一息つく。電車が動きだすとあることに気づく。どうも甘い香りが漂ってくる。何だろう、と思ってみると、吊り革がドーナッツだ。
そしてふと感慨深げに漏らすのだ。
「朝の通勤電車にはドーナッツがぶら下がっている」
何かの格言みたいだ。グランドには金が落ちているみたいな。気づけば、みんなぶら下がったドーナッツを食べていて、なくなったり、欠けていたり、パン食い競争の要領で手を使わずに食べて口のまわりを砂糖まみれにしてるやつもいる。
「おい、それ!、もうちょいだ!、ほら、あ!、ヘタクソ!だからおまえは
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