腥風/atsuchan69
る
甘い蜜を塗った人でなしの切符を手に
ひとりの詩人が子猫を抱いて笑う
いや、笑いつつ 泣いている。
溶け出したマスカラは ふた筋、黒い涙の川を残し
すでに子猫は詩人の腕の中で死んでいた
殺したのは、地獄の業火にも優る(残虐な)無関心。
僕や君の作る 例の、疲れた顔に紛れた冷たさの素顔・・・・
そして朝になれば子猫は棄てられ、非情にも日捲りは破られる
しかし彼女はたぶん、ふたたび子猫を買って笑うに違いない
ビルの最上階では今しも濃厚な血の色の落日を浴び、
黒い革張りのソファに座る老獪なウイザードが口元を弛める。
パノラマに眺める大窓から覗く その荒れ果てた世界に眼を
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