腥風/atsuchan69
眼を細め、
世界は斯く在るべし と、さも満足げにつぶやく
背後には、蝙蝠の翼をもつ奇怪な異人の声――
その声はざらついて棘だらけで、意味はまったく読み取れない
ただ、忘れられた荒野にいのちがあった
いのちは、瓦礫の下に芽生え 逞しく生き延びて
高く聳える超高層の構造物をやがて傾かせるほどの力を秘め、
いつか突然に咲く 巨大な一輪の花を蕾ませ
淫らに、かつ大らかに根を地下に張りめぐらせる
( やがて古びた黄昏の地平線を祓うように、
一陣の風が 赤黒い砂塵とともに過ぎるのを見た )
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