もいっぺん、童謡からやりなおせたら(第二稿)/角田寿星
でも訊ねてほしい
その時ぼくはきっと
足の裏のにおいを嗅ぐふりをして
困ったような笑顔を君にむけるだろう
詩は たぶん
読んだり暗誦したり歌ったりするものなんだ
と 思うんだけど
ぼくはやっぱり君の問いに答えられない
ぼくら もいっぺん
童謡からやりなおせたらいいね
ぼくら幼稚園のスモック着て 手をつないで
廃墟に腰かけて空を見上げて
体験した戦争とかの
記憶をすべてうしなったままで
そして君とぼくは 詩の話をしよう
今ここには 君とぼくと詩しかいないから
夢や木の葉の話でも
故郷の大きな火山の話でもいい
そうだぼくは ぞうさん とか
みかんの花咲く丘 と
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