雨が上るが/ねなぎ
 
滴に目を穿たれたので諦めた

帰りたくて
仕方ないのは
眠いからでは無く
逃避でも無く
知っていても
行かない場所へ
帰りたいと唐突に思った

ネクタイをYシャツの第二ボタンから
中に入れて見るが
さんざめく雨に購える筈も無く
染みてくる湿度と寒気に耐えていた

雨が上ったら
忘れていく傘の様に
椅子に座って
考えていたのは
空模様の事で

喫茶店の硝子に
水分が付着して
傘を持つ手が
自分の顔を歪ませている

多分
雨が上ったら
忘れていくのだろう

待っているのは
帰れないからで
何を待っているのか
雨に流れて思い出せない

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