始発前の駅前屋台にて/錯春
 
いくつかの県をまたぐ、
 北上川の(うちの前では江合河と名前を変えていた)濁ったにおい
 ほんとは、ずっと流れて来たんでしょうここに
 おでんの匂いにまざって、懐かしいどざえもんのにおいがする
 でも言わんとこ。祟られたら怖いしおでんは美味いし、働き者の笑顔をするし。私も流されて流されて相模原だし、恋人は可愛いし。
 「店主、訛りませんか。思いっきり訛っておしゃべりしませんか」
 「え。そんな都会のひとに聞かれたら恥ずかしいじゃない」
 「大丈夫。神奈川人は胎児に戻って寝ていますよ」
 「んなごだ言ったってそげな急に訛れんべ」
 「店主。いいぐえーに訛ってっぺっちゃや」
 「無
[次のページ]
戻る   Point(2)