始発前の駅前屋台にて/錯春
 
「無礼講だべ」
 始発が来る頃には、オヤジの影はすっかり薄くなり
 福島は語尾に「だべ」宮城は語尾に「べっちゃ」をつけることを再認識し
 だべべっちゃだべべっちゃ言って、
 幸せな気分でお勘定をすまして店を出た
 途中ふりむくと
 オヤジは屋台を折り紙のやっこさんの形に折り畳んで
 自分自身も自販機と自販機の隙間へと滑り込んでいった
 すっかり赤ん坊の様子になった恋人は、
 ハンバーグ一個分の大きさになってしまったので
 仕方がないから服の中へ入れた
 トレーナーとお臍のあいだはよほどぬくたまっていたらしく
 結局昼までもどらなかった
 

 
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