岡部淳太郎 「夜、幽霊がすべっていった……」に想う  /たりぽん(大理 奔)
 
り、首がなかったりと具体的な姿を見せる。またある時は騎士の物語とし
て仮面をかぶった魔物として、鬼火として、亡者として・・・物語のように紡
がれる幽霊達は、作者の中の不安や葛藤を、網膜を通さずに意識に反映したか
のように鮮明に曖昧だ。それは実体としての存在ではなく、他者には言葉でし
か伝えようのない「夜、」の「、」の先にあるなにか。

 やがて連作は物語を自覚する。超感覚的に察知され記録された幽霊達は今、
物語として自覚される。そして作者は夜の在処をもあばこうとする。漠然と浮
遊するだけだった幽霊は、明確に「死」と結ばれていく。幽霊は存在へと導か
れ、最後に「人間」へとつながって
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