岡部淳太郎 「夜、幽霊がすべっていった……」に想う  /たりぽん(大理 奔)
 
や各種のイルミネーションで煌々と明るく
照らし出された夜。昼間の太陽に焦がれてひとが作り出した真昼のような夜。
結局、この世界はほとんどが夜で満たされていて、朝や昼の世界は瞬間として
語られるものなのだろう。

 岡部淳太郎の連作「夜、幽霊がすべっていった……」の舞台はこうした数々
の「夜、」に潜む幽霊達との世界だ。幽霊と言ってもそれは単純にエクトプラ
ズムの集合体であるとか、思念波であるとか輪廻転生を実現するための媒体で
あるとか、という疑似科学的であったり理屈っぽい神秘主義のそれではない。

 作品には多くの幽霊が登場する。ある時は誰かにとりつこうとしたり、錯乱
したり、
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