家族カンバセイション (前編)/たたたろろろろ
ていたのだった。
小野の溜息は、もうあんな恐い目に合わんと済むわあーという安堵の溜息であった。誰が医師・小野を責められるだろうか。そして真知子が、私に出来ることなら何でもやります力になりますよ的なものとして受取った小野の薄い微笑みは、出来ることなら記憶なんて戻ってほしないわーーって、わしがなんもせえへんかったらええねや、うわ、ぼろいやん、あ、せやせや、診察料多めにとっといたろ、という今にも吹き出してしまいそうな満面の笑みを抑えるためのものだったのだ。誰が医師・小野を許せるだろうか。
しかし当然真知子は、小野の本音も、胸中で偽関西弁あそびをしているということも知らないので、小野の微笑みに
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