家族カンバセイション (前編)/たたたろろろろ
「お母さんもお気づきだとは思われますが、これは非常に大変なことです」
確かに、この病院に来るまでの間に真知子は事態の深刻さを身に沁みて感じていた。まず、壮太は体に障害を負っている訳でもないのに歩くことが出来ない。180センチメートル、70キログラム近い自分の息子を背負って、タクシーに乗せ、泣き出したらあやす、がらがら&おしゃぶりプレイ、タクシー内で壮太が漏らした小便の始末などしては運転手に平謝りをして、不快な視線を浴びせかけられたのであった。
「一から息子さんを、壮太さんを育て直さなければなりません」
病院の椅子は、背もたれの無いキャスター付きの丸椅子であった。壮太はバラ
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