家族カンバセイション (前編)/たたたろろろろ
一般に記憶喪失とは、韓流ドラマで馴染み深いように「此処はどこ私はだぁれ貴方はどなた」的な、冬のソナタ的なものであり、つまりは自分や他人、物事などについての情報を失ってしまうものである。しかし、壮太のそれは違った。壮太は、生まれてからの全ての記憶、学んで身に付いたこと等を全て失い、脳に関しては生まれたての赤子同然になってしまっていたのだった。
更に追い討ちをかけるようにショッキングなことに、この症状から記憶を取り戻したというケースはまだ一度も確認されていないのだという。小野は、全力を尽くしますが、といったがその後は言葉を濁した。まあ、無理だという事だろう。真知子は小さく震えている。
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