初恋/美砂
 

母はひとしきり主婦どうしの会話を交わしたあと
僕が君のことを(もちろん最高の友達として)忘れられないということを
説明し、僕に受話器を押しつけてきた
僕は懐かしい君の名をよんだ
うわずった男の声でね
だが
僕と君の会話は
まったくちぐはぐで、うまくいかず
何秒かの沈黙のあと
「じゃあ」といって君はあっさりと受話器を放棄した

期待はずれのまま電話はきられた
僕は何度も首をひねって
「なんか、ちがう」と不機嫌になって
母をこまらせた
「だからいったでしょう」などといわれたような気もする
とにかく僕はもう二度と君に電話してとはいわなくなった


僕が中学生になる
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