湧き水湧く流れ/錯春
 
震わせている。
 私は夢の帳からそっと手を伸ばして、ぐずる河にふれる。ふるふる、ふるふる、と発熱するおとこのひとと同じ温度が爪に入り込む。
 ごうごうと鼾をかく連れ合いの河が氾濫をおこして、熱を測るためにリンパ腺へあてられた私の手の平を吸い込む。
 私は、連れ合いの
「僕が文学をやめても変わらずに愛してくれる?」
 という昨晩の問いを思い出す。



 ?,病む鼓動



 私は、少なくとも詩人ではなかった。私が想像する詩人は、私とは対極にあるものだった。中学生のとき、手帳に初めてメモしたのは銀色夏生さんの詩。私はその詩を好きではなかった。けれど、ことあるごとに眺めていた
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