辺境の路/小川 葉
 

 今は何年? 知らない。
 歳はいくつ? 知らない。

 はなしにならぬ。

 仕合せは、あきらめぬ者のためだけに在り、くるしさは、あきらめた者だけが得られる高級な感覚、などと書いてみる。努力もせずに、自分は選ばれし者、などと書いてみる。

 目的がたいせつである。その目的がまちがいなく正しいと思えるなら、私もあきらめぬ。しかし今はわからぬ。いや、わかっているのだ。知らぬふりをしてるだけ。そのうち寿命がやってくる。

 ひとはだから、それが正しくなくても、それを目標と定め、その達成を仕合せと信じて生きている。この世に高級な志など不要。しかし、その馬鹿げた志を信じることでしか、生
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