絵のない絵本のような/朝原 凪人
 
あらあら、さっちゃんどうしたの?」

「あのねあのね、
 さっちゃん、ケンちゃんとけんかしたの。
 もうケンちゃんなんかをあそびたくないの」

さっちゃんはないているりゆうをはなしました。
そうすればおかあさんが
またやさしくあたまをなでてくるとおもったのです。

ですが

「さっちゃん、わらって」

おかあさんは
あたまをなでてはくれませんでした。

「さっちゃん? ないてばかりいてはダメ。わらって」

おかあさんはさっちゃんのほっぺたをさわるだけで
やっぱりあたまをなでてはくれません。

「どうして? どうしてそんなことい
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