新川和江氏への手紙 〜名詩を読む?〜 /服部 剛
みとることができない
読みとることができぬままに
やがてわたしは
いずこへか 連れ去られるのであろう
乾いた岩の上を
さらに千年が過ぎゆき
それが岩にとっての
今日であることも 悟り得ずに}
「日にいちど 腰をおろしにくる 波打際の岩」で独り海をみつめ
るひと時に、初老の詩人は一体何を想うのか、若い僕には想像し得
ぬ心境があるのでしょう。波が届くことの無い岩の上に佇む姿に、
長年生きて来た作者の落ち着いた心の境地を感じます。遥かな昔か
ら同じ場所にある岩の上で、詩人が本を開くと吹いて来る潮風に、
(はたはたと頁がめくれ またたく間に千年が過ぎてゆ
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