従順/hon
である。
さらに家から遠ざかった良くわからない地点で、さすがに是が非でも引き返す決意をした時には、私は相当疲れていた。これから同じ距離を戻らなければならないというのは、ちょっとうんざりさせられた。しかも、これまで全般に下り坂をおりてきていたので、復路はずっと上り坂である。
私は座り込んでしばしの休憩をとり、そこでは犬も疲れたのか割とおとなしくしていた。
――お前、アホじゃろう。…………
舌を出して喘いでいる犬のツラを見ながら、私はつくづく思ったものだった。
「いくぞ、アホ」と私は立ち上がった。
ここからは、もうわき目もふらず帰りたいのである。犬が立ち止まって電柱の匂いを嗅ぎ
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