従順/hon
 
である。
 さらに家から遠ざかった良くわからない地点で、さすがに是が非でも引き返す決意をした時には、私は相当疲れていた。これから同じ距離を戻らなければならないというのは、ちょっとうんざりさせられた。しかも、これまで全般に下り坂をおりてきていたので、復路はずっと上り坂である。
 私は座り込んでしばしの休憩をとり、そこでは犬も疲れたのか割とおとなしくしていた。 
 ――お前、アホじゃろう。…………
 舌を出して喘いでいる犬のツラを見ながら、私はつくづく思ったものだった。
「いくぞ、アホ」と私は立ち上がった。
 ここからは、もうわき目もふらず帰りたいのである。犬が立ち止まって電柱の匂いを嗅ぎ
[次のページ]
戻る   Point(1)