従順/hon
 
嗅ぎたげにしても、ヒモを引いてずんずん進む。犬の方もとりたてて抵抗はしなかった。正直、犬の方でもこれだけ好き放題に歩かされて、遠くまで連れてこられて、少しは不安を感じたものかも知れない。
 こうして、犬にコースの選定を任せたばかりに、散歩にしては度を越してしまった遠征から、へとへとに疲れつつ何とか帰ってきたのが、その日の前の晩の話である。
 そして私がそのような散歩をさせた次の日に、母が犬を散歩させたところ、普段では考えつかないほど犬は従順に言う事をきいたのだそうである。それで疑問に感じて、母は私に聞いてきた。
「あんた、何したん」
 ここで、ようやく冒頭とつながったというわけだ。
 い
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