従順/hon
に存在すら知らない、見知らぬ家々の間を結ぶ何でもない道である。
思えば、この犬は日頃から家で繋がれている際も、塀によじのぼって外ばかりみている犬であった。機会があれば決して逃さず脱走を図ってばかりいた。外を散歩するときにヒモが首輪から外れようものなら、猛ダッシュで走り去って視界から消えてしまう。よく河川敷とかで犬を放して遊び戯れている犬と飼い主を見かけるが、うちの犬においては考えられないことで、あれはいったいどういう仕組みで相互の信頼関係がなりたっているのやら、ついぞ私には分からないことだった。
こいつには家から遠ざかる本能しかないのだったな。腹でも減らない限り、帰巣本能を発揮しないんであ
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