従順/hon
 
して進みながら、ずいぶんな距離を進んだ感じがあり、こんなに長い道のりだったかなと思う。しかし、来た道をそのまま引き返すのも何なので、その道を最後まで抜けきることにする。
 抜けきって出たのは、ああ、こんな場所もあったかなあ、と周りの景色を憶えてるような憶えてないようなぼんやりした地点である。ただの散歩にしては、ずいぶん家から離れてしまった気がする。
 ついでのこと、ここでも犬に行き先を任せてみる。犬には帰巣本能というのがあったはずだ。そこはかとなく家の方角へ戻るルートを取るのではないか、と期待もあった。
 だが犬が躊躇なく取ったのは家からさらに離れていくルートであった。そこはもう、さすがに存
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