従順/hon
ころ、突然足元の地面が崩落し、澱んだ水の中に引きずり込まれたのである。崩落によって、一瞬のうちに私は腰まで水中に飲み込まれた。
その時私は一人きりで、周囲には誰ひとりいなかった。私はついに得体の知れぬ何者かに足首を掴まれて、沼の中へ引きずり込まれたと信じたので、これは完全に死んだと思った。崩落は私を腰まで水に浸したところでぴたりと止まった。自分は死んだものと信じた私は、蛇に半身を呑まれたカエルのように切ない気持ちで、その場に凍りついていた。下半身はズボンまでズブ濡れである。その後どうしたか覚えていないが、実は結構そのとき私の身は危なかったのであろうか。
私と犬は暗い道を進んでいく。そうして
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)