従順/hon
 
この道をまっすぐ抜けていっても普通では私が用のあるような場所には出ていかないので、存在は知っていても使うことはまずない道路である。
 さすがに、これは普段通っているコースではあるまい、と私は思った。
 道の両脇には草が生い茂っており、犬はそこへ嬉々として突っ込んでいく。付き合うにも限度があるので、茂みの外からヒモが届く一定の距離以上は踏み込ませるわけにいかない。あんまり長居が過ぎるようだと、ヒモを引いて元の道に戻す。
 途中、沼地のような大きな水溜りを回りこんで進むコースがある。何かの用水のようにも思えず、何のためにあるのか子どものころから不明な沼である。そこも通りかかってみると、至極久しぶ
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