従順/hon
ある。つまり、どちらへ進もうともあえてヒモを引いたりせずに、そちらへついていくという方針である。
出発すると早速、犬は道端の電柱や雑草を鼻でクンクンと点検しはじめる。そうしながら、えらく怪しげな方角へ進んでいく。私はそれについていく。
その進んだ先は、地元住民の私さえめったに立ち入ったことのない、街灯も少なく森閑とした山の中を抜けている裏道であった。アスファルト舗装はされているが、随所でむきだしになった地面と路肩の境界が曖昧に放置されている。視界をさえぎって黒々と密生した樹木の群れがその下を通る者を脅かすように立ち並んでいる。
ああ、ここは子どもの頃通ったことあるわ……私は思った。この
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