静かな氾濫をこえて?四つの断章 デッサン/前田ふむふむ
りを聴いたのは、何度目だろう。
母は子供のように笑っている。
眩しい食卓。五つの白い曲線の声、
溢れて。
遠い記憶の片隅から、搾り出した破片。
その草々のなかで、溺れている影を、
抱きしめると、
空白の砂丘を埋めて、驟雨に霞む橋梁が動く。
・・・・・
見上げれば、鳥は見えない。
灌木のような春が裂けて、
汗ばんだ夕暮れ、
誰もいない部屋の静物が、起き上がると、
退屈だったひかりは、度々、そつなく計算をして、
わたしの置き場を支えるのだ。
2
雨に濡れた寒々とした少女が、
絵本のような眼で、わた
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