ゲームの規則/藤原 実
本が開いたまま置かれている
風に吹かれて ページがめくられていく そのページとページの隙間から声は聞こえてくるらしい
――― 勝手にお話を書き換えられちゃあ わたしらの商売あがったりなんでね
<なんなの!> と少女は恐ろしさと気味悪さで おもわず本をつかむと壁にむかって投げつけた
本はすこしそれると 鏡にあたって床に落ち
鏡には大きなヒビが入ってしまった
すると そのヒビ割れから 白いけむりが抜け出てきたと見る間もなく
ひとりの中年の紳士が 少女の前に立っていた
――― やあ どうも こいつを
詩人は ひょいと シルクハットをアタマに置き
――― や
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