ゲームの規則/藤原 実
やっと とりかえせたんでね
というと ドアを開けて外に出ていってしまった
少女は急いで本を拾い上げて開いた
<あら この本は文字がぜんぶ裏返しじゃない>
本のどのページを開いても 文字の左右が逆に印刷されているのだった
<どうやって読むか しってるわよ>
というと少女は鏡に近づいて(曇りのとれた鏡は ぼうっ と光っていた)開いたページを映してみた
<あれ あっちのページも裏返しだよ!>
鏡に映った文字もやっぱり左右が逆になっているのだった
<この鏡ヘンじゃない> といいながら少女は鏡に手を触れようと右の手をあげて はっ とした
鏡の向こう側の少女も同じ右の手を差し出してきたのだ
<こんなことってないわ! あなたはいったい・・・>
だれ? と問いかけたその瞬間 少女はけむりになってしまった
そのころ 鏡の向こう側では……
<どうしたものかしら> と少女はじぶんのすがたがすっかり映るほどの
大きな鏡に息をはきかけては 何度も拭いながらつぶやいていた
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