ゲームの規則/藤原 実
シルクハットを鏡のなかに投げ入れると
鏡のなかのじぶんが投げ返してくる
さみしい 中年詩人の ひとり遊び
ある朝 いつものように あいさつがわりに
シルクハットを鏡のなかに投げ入れると
鏡のなかの詩人が ひょいと それを アタマに置いて
鏡のなかの部屋のドアを開けて出ていってしまった
詩人は そいつを追っかけて あわてて鏡のなかに 飛び込んだ
その途端 詩人は けむりになって 消えてしまった・・・
<どうしたものかしら> と少女はじぶんのすがたがすっかり映るほどの
大きな鏡に息をはきかけては 何度も拭いながらつぶやいた
いくら磨いても 鏡はま
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)