ゲームの規則/藤原 実
 
シルクハットを鏡のなかに投げ入れると
鏡のなかのじぶんが投げ返してくる


さみしい 中年詩人の ひとり遊び


ある朝 いつものように あいさつがわりに 
シルクハットを鏡のなかに投げ入れると
鏡のなかの詩人が ひょいと それを アタマに置いて
鏡のなかの部屋のドアを開けて出ていってしまった


詩人は そいつを追っかけて あわてて鏡のなかに 飛び込んだ
その途端 詩人は けむりになって 消えてしまった・・・


<どうしたものかしら> と少女はじぶんのすがたがすっかり映るほどの
大きな鏡に息をはきかけては 何度も拭いながらつぶやいた
いくら磨いても 鏡はま
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