新茶の季節<散文編>/佐々宝砂
農家にGWはない。特に茶工場は、深夜も休まず二十四時間操業だ。そんな茶工場の排気ダクトは、粉茶混じりのみどりの排気を吐き出す。工場の床はいちめんこぼれたお茶でまみどり、箒で掃くと、ちりとりに何杯も何杯もゴミ茶が集まる。下手なお茶より旨いお茶が出そうなゴミ茶だが、ホコリや汗やフケや紙くずが混じっているので、もちろん売り物にならない。地元の人間も飲まない。産業廃棄物として処理するほかないそのゴミ茶は、しかし本当にすばらしい香りを放つ。
茶工場では、さまざまなお茶が製造される。ゴミ茶ほどひどいものではないとはいえ、あまり売り物にならないお茶もなかにはある。うちの地方で俗に「フワ」と呼ぶものすごく安
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