ある電話/I.Yamaguchi
くや?」
ともう一回僕の名前を聞いて、僕はマキ、と彼女の名前を言った。さっきの電話でも同じ声と、同じやり取りをしていたことが、僕を落ち着かなくさせていた。
ビールを飲もうと冷蔵庫からビールとタマネギを取り出した。千切りにした後、流しっぱなしにした水につけた。すでにたった一時間前に切った電話の最後にマキがなんと答えたのか思い出せなくなっていた。答えを聞く気もなく電話を切ったのだが、耳から話した受話器から彼女は何か叫んだのは憶えていた。
水を止めたタマネギに塩もみをして、カニ缶をその中に空けて、醤油と一緒にかきまぜた。ビールを飲むために深夜につまみを作ることは、まずないことだった。コタツの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)