ある電話/I.Yamaguchi
ツの上においてある缶はびっしりと汗をかいていた。やはりビールを空ける気にはならなかった。汗をぬぐって冷蔵庫に入れてしまおうと、缶を手にとったが、気づくと、口の中で苦くはじけていた。冷たいのは上の方だけかもしれない、と下のほうを触るとまだ冷たかった。
テレビをつけるとニュースをやっていた。殺人事件のニュースだ。犯人が精神科に通院していたといっていた。チャンネルをすぐに「世界の車窓から」に変えた。ヤケ酒だと思わないように、ちびちびと飲んでいた。こういう番組があるから僕は振られるのだと思うとさらに苛ついて箸をサラダに伸ばした。僕はマキと裸でニュースを見ていると彼女はチャンネルを変えてといった。先週の
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